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2025.09.18 | スタッフ

情報誌ぐらんじお97号~国土交通省で検討されている常設作業帯。昼間と夜間どちらがお得?~

皆さん、こんにちは! 今回は、令和6(2024)年3月に 国土交通省 道路局 環境安全・防災課から発出された「無電柱化のコスト縮減の手引き」で検討されている「常設作業帯」について紹介します。

「常設作業帯」に関しては、2025 年 6 月 16 日に開催された令和 7 年度第1回無電柱化推進のありかた検討委員会でも「次期推進計画に向けた主な課題(たたき台)」として取り上げられています。

◆参考◆ 国土交通省資料

無電柱化推進のあり方検討委員会の公開ページはこちら

1.常設作業帯等による施工の効率化

「無電柱化のコスト縮減の手引き」では、無電柱化において低コスト化を図る場合、日々復旧を行わず、一定区間を開削した状態にする常設作業帯の設置や昼間工事の実施が有効であるとされている。

常設作業帯の設置にあたっては作業性を確保するため、工事車両や資機材を配置する作業帯幅、一般車両の通行空間、歩行者の通行空間等が必要になる。交通状況や道路構造、沿道土地利用等の現場条件に応じた適切な施工計画により、所轄警察との道路使用許可に関する協議や沿道住民への工事説明などを行い、合意形成を図ることが重要である。

 

電線共同溝事業の収集事例では、交通影響が大きい場合は夜間施工で日々復旧による施工する場合が多く、交通影響が小さい場合に昼間施工を行ったケースがあった。

電線共同溝工事の規制方法の検討手順

電線共同溝における施工方法は、道路管理者と所轄警察署との協議により決定される。道路管理者による検討の段階で、規制方法の選択根拠を明確にすることが重要であることから、経験の少ない技術者でも根拠を持って協議できるよう、規制方法検討のフローを作成した。

2.常設作業帯等を活用した整備事例

国道 56 号百石(ひゃっこく) 地区電線共同溝では、一部区間で常設作業帯を設置した昼間施工を試験的に実施した。
参考:百石地区電線共同溝事業

【事業概要】
・事業名 :国道 56 号百石地区電線共同溝
・事業区間:高知県高知市 桟橋通 3 丁目~高知県 高知市北高見町
・整備延長:2.2km(道路延長 1.1km) ・昼間施工:130m

位置図(左)と現場の施工写真(右)

令和 5 年 10 月 23 日(月)~10 月 30 日(月)、延長約 130mの工事で、従来の予定よりも3日間短縮することができた。

3.常設作業帯を推してはいるが …課題と展望…

国交省では、常設作業帯を推しているが、ここからは課題と展望について話していきたいと思います。常設作業帯にすると、交通規制が解消され、夜間工事中心だった作業を昼間施工に変更することができます。

夜間施工の場合のデメリットをあげると

・夜間に工事すると、当然、暗い中で作業をするので、昼間より作業効率が下がる。
加えて、日中の通行を円滑にするために夜間に掘削していた作業現場を再び埋め戻す作業をしないといけない(工事途中の状況をそのままにしておくことができず、不効率な作業が毎日続く)。
・冬場の作業は、非常に寒く、効率が悪くなる。
・深夜は人件費がかさむ。深夜時給として、昼間の 1.5 倍の賃金を支払わないといけない(労働基準法で定められた深夜の時間は夜 10 時~朝5時)。
・夜勤だと生活のリズムが崩れる。加えて今後ますます深刻になる労働不足も考えておかないといけない。
・住宅地に隣接する現場だったら夜間の騒音に対して苦情を言ってくる場合も少なくはない。

昼間施工の場合のデメリットと落とし穴

逆に昼間施工のデメリットはどうかというと、常設展示の場合、以下の2点が課題としてのしかかってくる。それは、交通渋滞と、夏場の熱中症対策である。

・電線共同溝工事の場合、渋滞を避けて円滑に工事を進めることは非常に難しい。郊外だと可能かもしれないが、大阪市内などの都会では交通規制をかけることはかなり難しい。
・令和7年 6 月 1 日より熱中症の罰則化が厚生労働省より定められた。
熱中症対策も今後検討していかないといけない。熱中症を早期に発見し、重篤化を防ぐため、6 月 1 日から職場で熱中症対策が義務となる。
具体的には、暑さ指数が 28 以上か気温 31℃以上の環境で連続 1 時間以上、または 1 日 4 時間を超える作業では事業者に適切な体制整備などが求められる。

厚生労働省からの通達

・『朝日新聞』(5/25)の記事でも、「熱中症で 6 月の 1 カ月間に死亡した人の数が、2024 年までの10 年で 564 人に上ることが分かった。1980 年代の 10 年間の熱中症死者の総計(580 人)とほぼ同じ水準に達した。猛暑となる 7、8 月は対策の必要性が指摘されているが、6 月でもリスクが高いことが浮き彫りになった」とある。

・もう1点、注目すべき点は、最高気温が 30℃を大きく上回っている日でも、最低気温はだいぶ下がっていること。

・その点、夏場の工事は、夜間で行うほうが理がありそう。

・施工関係者の話によると、とび職など固定した場所で作業する場合は暑さ対策もしやすいが、電線共同溝工事のような移動しながら地面近くで作業をする場合、、アスファルトの熱も加わって、実際の体感温度はプラス5℃かそれ以上になっている。

こちらの資料は下記リンクから閲覧できます。
https://www.mhlw.go.jp/content/001476821.pdf

まとめ

・常設作業帯でコストを考えて単純に昼間工事にすると労働安全衛生規則違反となる熱中症を招く可能性がある。
・冬は昼間工事が標準、夏は夜間工事を標準に設定にする等のルール作りが必要ではないか。

◎【参考】 2024 年の気温データ(大阪・東京)

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