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無電柱化コラム

国内外のまちづくり ,海外の事例 ,

2018.03.09

オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州、ニューサウス州)無電柱化の旅

南半球の国、オーストラリアに視察に行きました。NPO『法人電線のない街づくり支援ネットワーク』の会員企業の双日マシナリーさんのご協力のもと、現地に法人があるSICAME社さんにアテンドをいただき、海外の無電柱化事例の収集と調査を行うことが目的です。


▲ゴールドコースト、Q1ビルからのビュー

様々な無電柱化の工夫


↑オーストラリアの住宅地。電柱・電線はありますが道路を横断していません。

日本は全国どこでも、配電は100Vと200Vの2種類です。オーストラリアでは、配電会社が異なるので州ごとに高圧送電と低圧配電のV数が異なります。ゴールドコーストやブリスベーンのあるクイーンズランド州は11kVで高圧送電します。そして、低圧は240Vと415Vで配電します。一方、メルボルンのあるビクトリア州は22KVでの高圧送電です。配電は同じです。日本の高圧配電は6.6KVですので、2~3倍程度変わってきます。これらには、それぞれメリットデメリットがありますが、無電柱化にも様々な工夫をしています。その一つが、ピラー(柱や標柱といった意味)と呼ばれる分岐装置です。(右写真参照)

 

ゴールドコーストでは、このピラーが至る所にあります。単純な構造ですが、大容量のトランスフォーマー(地上機器 500KV~1,000KV)から、低圧に落として、各建物に分岐しています。最近では、自動車が接触するということで、このピラーの地中化も行われています。その際に、重要になるのが、ケーブルの分岐です。日本では、低圧ケーブルでも、幹線は結構な太さになります。そうすると、曲率(まがり)が大きくできません。よって、地中に収納するハンドホールが大型化したりします。これらの問題を解決したのが、今回ご案内いただいたSICAME社の『ケーブルコネクタ』です。昨年の無電柱化推進展の講演でもセブ島の事例でご案内しました。これを用いれば、ピラーを使わずにケーブルを差し込むだけで素早く簡単に分岐が可能で樹脂製のピットに収めて地中化し防水もできるのです。
よく、「無電柱化をすると、地中のケーブルやハンドホールが雨とかで浸水してダメになるのでは?」という質問をいただきます。ケーブル分岐部分は水に浸かることを前提にしています。地中のケーブルやハンドホール、管路などは防水仕様になっており、水に浸かっても問題ありません。これは、電気ケーブルでも通信ケーブルでも同じです。この防水仕様が架空線と違いコストアップの要因になっています。よって接続部分を簡素化できれば、コストは下がるのです。分岐部分をこのようにした技術を日本でも取り入れれば、新規住宅地での無電柱化の際に電力用のハンドホール(十万円程度)が、写真のようなバケツ(数千円程度)のようなもので事足りるようになります。

 

 

▲樹脂製のピットに収まる、ケーブルに接続されている直方体がコネクタ

 

新規住宅開発地での無電柱化の取組

既存のピラーで分岐させていたケーブルを、地中用のコネクタにやり代えて地中化している貴重な施工現場を見せていただくこともできました。現場を見せていただいたのは、AUSNET社が施工した高級住宅地やUNITED ENERGY社が施工中の現場です。その現場で最も感心したことは、地中化工事に対する住民からの理解が浸透していることです。工事によって歩道を塞ぎ、車両が通りにくくなるのですが、住民は一切苦情を言いません。逆に協力的です。こうした環境も無電柱化の推進には必要であるということを改めて感じました。

コネクタへの取り換え作業中・工事による歩行止めの看板

今回の海外視察は無電柱化事例の収集と調査が目的でした。ですが、改めて海外に学ぶことの重要性を痛感しました。オーストラリアでは、ピラーの代りにケーブルコネクタとピットを用いて無電柱化への転換を効率良く行っています。また、それらの工事に対する近隣住民たちからの理解と信頼関係の厚さを実感できました。日本というシステムは非常に素晴らしく強固に作られていますが、それらは時に、頑丈すぎて壊れない→つまり『新しく更新されない』『住民たちになかなか理解されにくい』事が多々あります。無電柱化もその典型なのです。

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