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無電柱化コラム

2020.05.14

電線類地中化工事の進む諸外国の無電柱化率やコスト・手法について、日本と比較してみました

ヨーロッパでの電線類地中化

ヨーロッパの電線類地中化と日本の地中化率との圧倒的差!


主要都市のロンドン、パリなどでは100%の無電柱化率なのに対し、日本では最も進んでいる東京でも7%に留まってしまっています。
2003年欧州委員会の調査データによると、中・低電圧(10~50kV、200~400V)ネットワークの地中化率はオランダ100%、ドイツ70%、イギリス63%、ベルギー59%、デンマーク56%、スウェーデン36%、ノルウェー36%、イタリア31%、フランス29%である。また、60~150kV高電圧送電ネットワークの地中化率はやはり下がるが、オランダ38%、デンマーク16%、イギリス15%、ベルギー8%、ドイツ6%、フランス4%、ノルウェー3%、イタリア1%、そしてスウェーデンは0%です。

海外と日本の架空線・電柱等の法的規制

対象都市 無電柱化率 架空線や占用の規制
東京23区
大阪市
7%
5%
・国直轄管理の緊急輸送道路において、電柱の新たな占用を禁止(H28~)
ロンドン 100% ・19世紀の街灯建設に際して、ガス事業者との競争の公平性を考慮し、「電気法」により架空線を禁止
・架空線の設置には低圧の引込線等を除き、承認が必要
パリ 100% ・自治体と配電事業者との契約により地中化を規定
ニューヨーク 83% ・1884年委架空線の地中化条例を公布し、既存の架空線の地中化を義務付け※マンハッタン以外は地中化義務なし

 

設備・整備の点での日本との違い

経産省が海外の電線類地中化(無電柱化)の調査結果を公表しました。ケーブルは日本では導体に銅を用いているのに対し、他三カ国はアルミを用いています。一般的には電力用途のケーブルでは銅を主体として使用されていますが、超長距離送電線や配電線の分野では、送電効率に劣るものの比重が小さく重量が軽いアルミニウムが使用されています。地中化工事は大変なので軽量化したものを使うことで工事の促進を図っているのでしょうか。

埋設方法

日本では、しっかりとした管路方式が一般的ですが、海外では直接埋設方式や施工のしやすさを考えた管を使用した管路方式などが採用されています。

出典:国土交通省資料「海外の無電柱化事業について」

事業主体は?

電線類等の所有者・管理者、道路管理者との関係

  • 日本では道路管理者が管路・特殊部を整備・管理
  • 海外ではほとんどの都市で、管路・特殊部の整備・管理は電力・通信事業者
対象地域・都市 無電柱化率 電線類等の整備・管理
東京23区
大阪市
7%
5%
道路管理者(管路)および電力・通信事業者(ケーブル・地上機器)
ワシントンDC 65% 事業者
ニューヨーク市※1 83% 事業者※1
台北市 85% 事業者
ロンドン市 100% 事業者
パリ市※2 100% 事業者※2
ハンブルク州 95% 事業者

※1 ニューヨーク市では、通信管路は管路のレンタル専門事業者が所有・管理
※2 パリ市では自治体が管路・特殊部を所有し、事業者にその管理を委託

ヨーロッパの電線類地中化コスト

電線類地中化(無電柱化)工事コスト比較

経産省が海外電線類地中化の調査結果を公表しました。
各国のkmあたりの工事コストを見てみましょう。
[日本:約3億5000 万円/km、英国:約6,000 万円/km、フランス:1,600 万円/km、インドネシア:約1,075 万円/km]
となっています。やはりコストに関しては日本がずば抜けて高くなっていますね。さらに、日本は外国に比べると工事の際の細かい規制が多くあります。
例を挙げると
・日本は常設作業帯が設置できないのに対し、外国では設置が許可されています。
・日本は工事の際に毎日埋め戻しと仮復旧が必要なのに対して、諸外国はそこまで規制が厳しくない。
これらの理由から日本が電線類地中化を進めるには諸外国よりより対応しなければならない問題が多くあることがわかりました。

低コスト化のための技術開発

海外では、電線類の地中化コストを削減するために、様々な技術を開発・活用しています。

技術開発の種別 国・都市 技術の概要
掘削・埋め戻しの迅速化 台北 掘削・埋め戻し土量を削減し、迅速化・省力化することにより低コスト化
電線類埋設の迅速化 イギリス・フランス
・オーストラリア等
電線類埋設を機械化し、迅速化・自動化することにより低コスト化
既存ストックの活用 台北 側溝など道路の既存ストックを活用することにより低コスト化
埋設物件の損傷回避 ドイツ・フランス
・イギリス・台北
埋設物件を試掘せずに回避することで、試掘費用の削減、工期の短縮を図り低コスト化

 

埋設工事における掘削・埋め戻しの迅速化

台湾では掘削土量を削減するため浅く狭い溝にケーブルを埋設
掘削後の埋め戻しは時間短縮のため、低強度コンクリート(CLSM)を使用
(養生は数時間、締め固め不要、1日で工事完了)
掘削・埋め戻しの迅速化・省力化により低コスト化

 

台湾:掘削を浅く狭くし、掘削土量を削減(写真左) CLSMを利用した埋め戻し(写真右)
(出典:交通省資料)

電線類埋設の迅速化

無電柱化の歴史の長い欧米では、
*掘削とケーブルの直接埋設を同時に行う専用機材
*非開削により管路を施工するための機材
*既設管路にケーブルを通す専用機材
等の使用事例があります。
埋設の迅速化・自動化により低コスト化

英国:HDD(Horizontal Directional Drilling)機材 フランス:ケーブル直接埋設の専用機材(出典:交通省資料)

既存ストックの活用

*側溝内部に敷設したケーブルのために、側溝内部にクロージャーを設置する過溝蓋版工法を導入
*アスファルト表層に幅数cmの溝を掘ってケーブルを埋設する微管溝工法を本格的に導入
既存の側溝や舗装空間を活用することで、低コスト化

台湾:過溝蓋版工法(写真左)  微管溝工法(写真右)
(出典:交通省資料)

埋設物件の損傷回避

*ケーブル保護対策としてケーブルの上部にICタグを設置する事例(ドイツ、イギリス等)
*埋設物件のデータベースやGIS(地理情報システム)を整備している事例(フランス、ドイツ、台北等)
試掘せずに埋設物件を回避することで、低コスト化


ドイツ:埋設したケーブル位置を知らせるICタグ フランス:埋設物件のデータベース

台北:埋設物件のGIS(出典:交通省資料)

電線類地中化工事コスト比較2


▲日本の空               ▲イギリスの空

欧州委員会のレポートによれば、EU9か国で調べた高電圧送電ネットワークの地中化/地上化のコスト比率は以下です。 コスト比率はネットワーク構成の違い、埋設場所の条件により大きな開きがあります。
(2003年のデータ)
・150/220kV :4.0~7.7倍
・380/400kV :5.9~25.0倍

このデータには金額が示されておらず、日本のコストとの比較はできませんが、中・低電圧配電ネットワークに関してはイギリスの調査機関が調べた1999-2001年の金額データがあります。これによれば1系統・1㎞当りの地中化ラインの敷設コスト及び地上化ラインとのコスト比率は以下です。(当時の為替レート£1.00=\200で計算)
・132kV :77万ポンド(1.5億円) 11倍
・ 66kV :77万ポンド(1.5億円) 14~19倍
・ 33kV :18万ポンド(3600万円) 11倍
・ 6.6kV : 7.9万ポンド(1600万円) 3.4~4.8倍
・低電圧 : 7.3万ポンド(1500万円) 5.7~6.4倍
データ量が少なく電圧との厳密な相関はないですが、高電圧になる程地中化のコスト比率は高くなる傾向にあります。

アメリカのレポートによればアメリカの標準値は$50,000‐$1.8Million/1Mile(320万円‐1億1200万円/1㎞)でヨーロッパの数値に近いです。日本の標準値は5~7億円/1㎞と言われており、欧米とは大きな開きがあります。
反面、地中化ラインにコストメリットがある要素もあります。 地中化ラインの信頼性が高く、メンテナンスコストが低いことは、ライフサイクルでの維持・管理コストを下げるメリットがあるのです。

また、欧州委員会の調査結果では、地中化ラインは送電ロスが少ないことにより、ライフサイクルでは15倍のコスト比率は12~7倍まで下がると報告されています。
更に、オーストラリアの調査では地中化ラインは自動車事故の減少、木の枝打ち・伐採がなくなること等で20年間にトータル19億ドルのコストメリットを生むと報告されています。

命の価値、自然の価値を正しく評価すれば、電線地中化は決して高コストではありません

ドイツの電線類地中化工事の報告

我が国における電線類地中化に興味を持って以来、海外に行ってもその国の電線類地中化の様子に関心を持つようになりました。電線類地中化が進んでいるヨーロッパ、特にドイツの電線類地中化工事現場の写真を集めています。

ドイツ等ヨーロッパ各国では電線類地中化が常識となっていて、特に問題となる事無くとり進められています。その違いはどこにあるのか考えた時、いろいろ理由があるにせよ、素人目にはドイツの電線類地中化工事は非常に簡単です。工事現場を見る限り、送配電の幹線はともかくとして市街地の配電末端部分の工事は日本の工事現場に比べて非常に簡易です。

日本で電線類地中化の促進を考える場合、色々な技術(安全)基準の改正や技術開発が必要ですが、結論的には“工事の簡便化”を最優先する必要があると考えます。そのためには海外で行われている様な簡便な工事を前提に、各国では安全の確保がどの様になされているのかの確認を行うのが良いと考えています。